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惡態日記

嘉向徹と保科亮太の自作バイブルです。日曜の朝に読みましょう。

僕らによる惡音書 第1章

 1 予定より少し早く会が終わる。日曜日の、まだ太陽が頭の真上を越えない頃に談話会に参じていたのだ。主催のYさんからお昼の食事に誘われる。何人かで行くのだそうだ。夕刻までは暇だったので、僕は「ぜひ、行かせてください。」と返事をする。続けて「カリーと海の幸の物どちらを好まれますか。」と尋ねられ、僕は海の幸の物と答える。隣にいた吟遊詩人も海の幸の物を選んだので、行く場所が決まった。海の幸の物を食せる茶屋だ。

 2 ひどくお腹が空いている。ここ最近、睡眠のサイクルが妙におかしくて、昨日は夕刻6時から眠りこけってしまった。今朝早く起きてからまだ何も口にしていない。少し歩いて目当ての店に着く。店の前には看板があり、本日の営業は終了しました、と書いてある。すかさず僕は言う。「じゃあ、カレー屋さんにしませんか。」早く食べて、次の予定に行かなければ、と若干焦る。

 3 あいにく、カレー屋さんも満席である。辺りを見回すと、カレー屋さんの隣の隣に古ぼけたイタリアンのお店を発見する。このお店も混んでいるがここには入れそうだ。イタリアンのお店に入る。メニューを開く。

 4 まず、目に飛び込んできたのは、二倍盛り200円。次に、カルボナーラ1000円。その次に、カルボナーラ・マーレ(魚介)1400円。僕はこの時点で何を頼むかを決める。おごってくださった吟遊詩人さん、今回も本当にごちそうさまでした。

 5 フォークをぐるり、一口目、またフォークをぐるり、大きく口を開けて、二口目。勢いよくあっという間に完食する。たらふく食べた後、やってくる眠気がすごい。思い返せば、昨日も、そのまた昨日も、このお昼過ぎの時間に、昼寝、というには深すぎる睡眠を取っていた。

 6 次の予定に対する僕の情熱が眠気によって鎮火する。

 7 しかし、次の予定というのは、人にお呼ばれしている予定で、それも何日も前に約束している予定だった。約束の数時間前になって取り消しすることを、少しの皮肉を込めて僕らはドタキャンと呼ぶ。

 8 小学生の頃を思い出す。宿題を忘れた人に起立の号令がかかり、なぜ宿題を忘れたのか、を懺悔した人から着席する。皆、忘れたのにはそれなりのわけがある。

 9 僕は臆さずに言う。「やりたくなかったからです」そう言った後も、僕は立っている。

 10 先生の目を真っ直ぐに見つめて、その言葉を突き通す。そうやって、授業を遅らせていた。

 11 「ちょっと」と言って、ひとり店の外に出る。次の予定に誘ってくれたOさんに電話をかける。僕は今の自分を言う。次の予定に行くよりも、三大欲求の一つである、眠りたい、ということを言う。Oさんは「もしよかったらこっちに来てから仮眠したら」と言う。

 12 百歩も千歩も譲ってくれたOさんの気持ちが僕に刺さる。優しさに揺れる。しかし、ここは譲れない。

 13 僕は、優しさが厳しさで、厳しさが優しさであることを知っている。また、冬にお母さんがつくってくれたクラムチャウダーを食べる前、もう既に、心が暖まっていることを知っている。

 14 大丈夫、と自分に言い聞かせ、僕は「安らかに眠らせてください」と伝えた。

 15 翌日、Oさんからメッセージが届く。「無事イベントは終わったよ☆来年もまたやろう(顔文字)」僕はすかさずメールを打つ。「ぜひぜひによろしくお願いいたします!!!フェイスブックを拝見しました☆昨日は熱海に戻って夕方6時から今朝の3時まで爆睡しました!!!ありがとうございました!!!!」